将棋におけるズルについて


わたくしは、将棋におけるズルを「特段の工夫もなく、実力に関係なく勝ちやすい形・戦法・囲いをいう」と定義するのが妥当と考えております。例えばズル熊は、ただズル熊に囲い、いい加減に攻めまくるだけで、多少の実力差に関係なく勝ちやすいことは自明です。

わたくしはここ20年の2万局以上のプロの棋譜を持っておりますが、ズル熊の勝率は6割をほこっています。これは他の戦形に比して明らかに異常な数値といえます。また将棋の実力名人と考えられる加藤名人が相手に何の工夫もなく、ただズル熊やズルシステムに組まれたというそれだけで苦戦を強いられていることもその証拠となります。

しかもズル熊は盤の隅に玉をガチガチに囲うため人をはなはだ腹立たしく、不愉快にさせるものであります。
戦国時代の上杉謙信は常に先頭に立って戦ったので現代でも「軍神」として非常に人気があり尊敬されています。一方、関東の雄、北条氏康は、実力は抜群に高かったのに、戦のときはいつもガチガチの小田原城にパッと篭城するだけで勝利を収めていたため、現代においては影が薄く、あまり人気もありません。
また、わたくしがネット将棋をしていたとき、女性の事務員がわたくしの穴熊を見て、将棋のルールを全く知らないにも関わらず、「またセコいことをしている」とわたくしを非難したことがございます。これなどはルールを全く知らない人ですらズル熊のいびつな形を見て直感的に嫌悪感を抱く例証といえるでしょう。
なお、このときのわたくしの穴熊は、ズル契約を結び相手の許可をとった上で行ったことであるので、少しもズルくないことを、老婆心ながら附記いたします。

さらに、ズル熊に敗れるときはたいてい、駒台に乗り切れないほど駒を持っているのに使うヒマもない、ズル熊はガチガチで王手どころか詰めろすらかからないという不愉快な要素が多いのです。こうしたときは盤面をひっくり返し、ズル熊党に向かって駒を投げつけたくなるほど腹の立つものであります。
かような意味で、ズル熊は他人の心を深く傷つけ、人間性に反する戦法であり、また、実力ゲームと考えられていた将棋の変質を招くものであります。ズルの代表格はズル熊ですが、その他にも、ズルシステム、言い訳囲いなど、ズルな戦法にもさまざまあります。それについての詳細は今後、徐々に明らかにしていくこととします。いずれにせよ、ズルは非難されるべきであり、わたくしは、当面の目標としては、ズル熊とズルシステムの禁止を目指しているという次第であります。


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